社会保険

社会保険加入、事務手続き

スポットでの業務も承ります。

社会保険とは

一般的に企業が関係の深い社会保険といえば、年金保険である「厚生年金保険」、医療保険である「健康保険」でしょう。  

ご存知のように年金保険は老齢、障害、死亡に対して国民の生活の安定を図るものであり、医療保険は業務外の病気、けが、出産等に対し給付を行い、また扶養する一定の家族に対しても保険を給付するものです。  

これらの社会保険は国がその社会政策、社会保障を実現するためのものであるため、事業主や従業員の自由な意志により、加入したり加入しなかったりして良いものではありません。

加入対象者

健康保険、厚生年金保険制度では、【法人】は強制適用事業となります。

その法人で働く人で、社会保険に加入しなければならない加入基準が設定されています。パートや嘱託といった呼称に捉われず実態で判断します。

※ 従業員数が「5人未満」の「個人事業」は、加入義務がありません。
※ 農林水産業、サービス業の一部等の事業所は、加入義務がありません。

しかし、従業員の過半数による加入希望があれば社会保険に加入することができます。これを『任意包括適用事業』といいます。この場合同意しなかった方々も含めて加入しなければなりません。ここでは法人の新規加入に絞ってご説明します。

<法人の代表者及び常勤役員>
社員が一人もいない場合でも、法人の代表者は法人との間に使用関係があるとして強制適用となります。

<パートタイマー・アルバイト・嘱託社員等>
実態に即して判断しますが、目安としては常用雇用関係があり、他の一般従業員と比較して1日又は1週間の勤務時間が概ね四分の三以上、かつ1ヵ月の所定労働日数が四分の三以上の場合は加入義務があります。

加入適用除外者

雇用形態が以下の場合は、適用除外となります。(加入義務がない人)

  1. 日々雇い入れられ、1ヵ月を越えない人
  2. 2ヶ月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えない人
  3. 季節的業務に使用され、4ヶ月を越えない人
  4. 臨時的事業(博覧会など)に使用され、6ヶ月を越えない人

※ 70歳以上の方は厚生年金の対象外です。健康保険だけの加入となります。

健康保険の被扶養者

健康保険の扶養になるには下記の条件があります。

  • 被扶養者の範囲(主に被保険者の収入によって生計を維持されている三親等以内の親族)三親等以内の親族で、生計維持関係は同じでも、下図四角枠内の親族は被保険者と同居している必要があります。(同居していない場合で被扶養者とするためには生計維持関係の証明が求められます。)※平成28年10月より、被保険者の兄姉は同一世帯の要件が撤廃されました。

健康保険の被扶養者

  • 扶養に入る方の年間収入が130万円未満(60歳以上または厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合は180万円未満)かつ被保険者の年間収入の半分未満が原則です。
  • 16歳以上60歳未満の人(配偶者及び高校生を除く)を健康保険の扶養に入れる場合、被扶養者の状況に応じて「在学証明書」、「非課税証明書」が必要になります。

社会保険料の計算

社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)の決定には以下の3つ手続きがあります。

  1. 資格取得時決定
  2. 定時決定
  3. 随時改定

定時決定、随時改定は後述しますので、ここでは会社を設立し新規に加入する場合、保険料を決定する「資格取得時決定」に関し、ご説明します。

法人が新規に社会保険に加入する場合に、まず社会保険に加入しなければならない方々の保険料を決める基となる報酬、給与を確認します。

役員ならば決められた手続き(取締役会)による報酬額と交通費等を含めた総額、従業員の場合は採用時に定められた給与(交通費その他諸手当てを含みます。また残業が恒常的に見込まれる場合は、想定される1ヶ月の残業代や現物給与(※)を含みます。)を標準報酬月額保険料額表に当てはめ各人の報酬月額を決めます。

※ 現物給与・・
通勤定期券、食事、住宅その他被服や自社製品などを現物で支給する場合、それらが労働の対償として支払われるこのであれば、報酬として給与に算入しなければなりません。 被服のうち、制服や作業衣は、業務に使用する用具の性質を持つもので、労働の対償とはされず、報酬には含まれません。 また、食事や住宅などの現物については、地方社会保険事務局長が標準価額を定め、この標準価額に基づき金銭に換算することになります。

40歳以上65歳未満の人は健康保険料のほかに介護保険料がかかります。
(65歳以上の方は原則年金から介護保険料が控除されます。)

また、全額会社が負担する児童手当拠出金というものがあります。

注:
児童手当拠出金は、児童手当制度を財源面でささえるものです。児童手当制度とは、児童を養育している方に手当を支給することで家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健全な育成及び資質の向上に資することを目的とした制度です。

社会保険新規加入シミュレーション

それでは、実際に架空の会社を例にしてみてみましょう。

株式会社 山川商事

○代表取締役1名その他常勤取締役2名 全員扶養家族なし
○従業員1名(正社員)
配偶者、子(7歳)一人
代表取締役 山川 一 さん(55歳)月額報酬 900,000円
交通費  4,500円
常勤取締役 海原 太郎さん(45歳)月額報酬 420,000円
交通費  17,000円
常勤取締役 岸  次郎さん(38歳)月額報酬 350,000円
交通費  10,000円
監査役   波風 崇さん(62歳)月額報酬 100,000円
基本給  250,000円
役職手当 10,000円
従業員   青空 晴さん(30歳)交通費   8,000円
見込残業  20,000円

(※役員は取締役会にて報酬決定、従業員は雇用契約書による。)

標準報酬月額保険料額表にそれぞれの総支給額を当てはまると、個人負担は下表の内容になります。
(監査役の波風さんは常勤ではないので社会保険の対象外とします)  ※ 平成30年3月現在の保険料率にて試算

  総支給額 標準報酬月額 健康保険料 介護保険料 厚生年金保険料
山川さん 904,500円 健880/厚620 43,560円 6,908円 56,730円 ※1
海原さん 437,000円 健440/厚440 21,780円 3,454円 40,260円
岸 さん 360,000円 健360/厚360 17,820円 なし 32,940円
青空さん 288,000円 健280/厚280 13,860円 なし 25,620円
合計   97,020円 10,362円 155,550円

※ 1 厚生年金保険料の上限額が635,000円のため、この額を超える山川さんの厚生年金の標準報酬月額は620,000円となります。また健康保険料についても上限値1,355,000円を超える場合は、健康保険標準報酬月額は1,390,000円となります。 

※ 加入が認められた被扶養家族には健康保険料はかかりません。また被扶養家族として認められた配偶者は第3号被保険者(サラリーマンの夫・妻)となるので国民年金の保険料もかかりません。  

※ 社会保険新規加入時に申請する資格取得届に記載する総支給額には、諸手当、残業、その他現物支給を含みます。  

※ 給与から上記各保険料(個人負担分)を毎月控除しますが、会社が納める保険料は個人負担保険料とその同額の保険料(労使折半のため)及び児童手当拠出金を合計した額を負担します。

児童手当拠出金

全額会社が負担します。全員の厚生年金の標準報酬月額の総額に保険料率を乗じます。
 (620,000円+440,000円+360,000円+280,000円)×0.23%=3,910円

  • 厚生年金保険の保険料率は現行水準で固定されます。                             平成16年10月から段階的に引き上げられてきた措置が、平成29年9月の変更で終了しました。
  • 健康保険・介護保険・児童手当拠出金の保険料率は、変更されることがあります。
  • 年金事務所から毎月中旬に保険料納入告知書が郵送され、毎月の保険料の明細が記載されています。
  • 入社時(資格取得時)に決定された保険料は、随時改定(後述)に該当しない限り、
    ・1月1日から5月31日の間に資格取得した人はその年の8月まで
    ・6月1日から12月31日の間に資格取得した人は、翌年の8月まで   有効です。

例示した「株式会社 山川商事」の場合、5月1日の新規加入が認可されると、決定した保険料は当年8月まで有効で、さらに定時決定(後述)により決定された保険料が当年9月から翌年8月まで有効となります。

社会保険料の納付方法

社会保険料は、毎月末日に締切り、翌月中旬に保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、児童手当拠出金)の内訳明細が記載された納入告知書(請求書)が郵送され、月末に銀行引落を希望した場合は指定金融機関から引き落としされます。また銀行引落を希望しなかった場合は請求書に同封される納付書で支払います。

その他保険料の決定改訂

これまでご説明してきた資格取得時の決定のほかに、以下の保険料決定、改定の手続きがあります。

定時決定

通常社会保険料は、一年に一度(毎年7月)各被保険者の標準報酬月額が実際の報酬(給与)と見合っているか確認するため、標準報酬月額の改定の手続きが行われます。これを定時決定といい、毎年4、5、6月の3か月の報酬の平均値を求め確認、決定されます。詳しくは別編でご説明します。この時決定された標準報酬月額は、その年の9月より改定され、通常は10月支給分の給与から控除(翌月控除の場合)します。その決定された保険料は、原則翌年の8月まで適用されます。この定時決定の手続きは算定基礎届の申請によって行われ、毎年7月の定められた期間内に申請するものです。

随時改定

被保険者の標準報酬月額は、前述しました社会保険新規加入時または年に一度の定時決定(算定基礎届)で決定もしくは改定されますが、どの会社も昇給月はまちまちですし、また時給制や日給制から月給制になったり給与体系の変更もあり得ます。このような変更により報酬額に大きな変動があった時は、実態とかけ離れた状態になってしまいます。このような状態を是正するため随時改定(月額変更)といった手続きにより修正します。これにより次の定時決定を待たずに標準報酬月額が改定されます。随時改定は、報酬(固定的賃金)に著しい変動があった月(変動月)以後の3か月の平均値により標準報酬月額をもとめ、従前の標準報酬月額と比較し2等級以上の変動があり、かつ変動月からの3か月のすべての月において報酬の支払基礎日数が17日以上あった場合に適用されます。

社会保険加入手続きのご相談は社会保険労務士法人あおぞらまで。

アドバイスを行っています。

参考料金

法人の新規加入手続き
基本料金 35,000円 + 加入人数 2,000円×人数

諸手続き
15,000円~
SRP

当事務所は社会保険労務士個人情報保護事務所として認定されました。